相続税申告後の税務調査のことも考えて

 最近、富裕層への税務調査で申告漏れが多く出ているという新聞記事をよく目にします。相続税は2015年の税制改正での「基礎控除額の引き下げ」後、普通の都市部に住居を持ち、老後の生活資金にと思い預貯金、有価証券等を少々持っていたという方も相続申告をしなければならなくなってしまっています。相続税は富裕層の方の申告であるとされている面もあるのでしょうが、税務調査の対象とされる場合は所得税や小規模事業者の法人税の調査に比べると格段に多いです。10人に1人くらいの比率で調査になっていると言われています。
 正確に申告・納税を済ませたつもりでも税務署から「行政指導」や「実地調査」で間違っていると指摘される場合があります。指導にとどまれば申告をやり直して不足分の税金を納付すれば終わりです。しかし調査で誤りとされた場合は不足分に加え「過少申告加算税」「重加算税」などが課されます。事実上の罰金です。
 調査の時期は「死亡から1年以降」が慣例となっているようです。税務職員が自宅まで訪れ、遺族への聞き取りや通帳や印鑑など現物を確認します。証拠隠滅の恐れなど極めてまれなケースを除き、原則、日時や場所、目的などを通告するように法律で定められています。私ども税理士事務所が関与している場合、この日時・場所等をまず税理士へ連絡してきますので、納税者のご都合等もお聞きして、日時・場所等も決めています。
調査で税務当局が注目するのが「名義預金」です。子や孫名義の口座に少しづつ財産を移しているという人も多いからです。調査では①口座の存在を名義人が知っていたか②亡くなった人名義の口座と印鑑は別か③通帳や印鑑は誰が管理していたのか④入出金の場所⑤多額の出金の使途―などが確認されます。私どもが事前に相談を受けていれば充分にこれらのことに注意し毎年契約書をきちんと作って行く等の指導もさせていただいています。
 私どもの事務所では将来に発生するかもしれない税務調査のことも充分に考えて相続税対策等の相談をお受けしています。何でもご相談ください。

税理士法人野口会計事務所 所長 野口泰弘

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